犬の脂肪織炎と膀胱がん

PROシリーズ

ペットの悩み・疑問 獣医師がお答えします

脂肪織炎の次は、膀胱がんと診断されました

ダックスフントのことです。

12歳のときに背中に脂肪織炎ができて通院しています。

なかなか治らず、大きな病院を紹介していただき腫瘍科で診てもらったところ膀胱がんと診断され戸惑っています。

脂肪織炎と膀胱がんは関係があるのでしょうか。

また、膀胱がんを早期発見するためには、どんなことをすればよかったのですか。

脂肪織炎の原因のひとつ「 脂溶性ビタミン欠乏」

脂肪織炎は脂肪の炎症です。
突発性の場合、原因が分からないものもありますが、病因の一つに脂溶性ビタミンであるビタミンEの欠乏症があります。
ドッグフードに使用されているミックストコフェノールや、ナチュラルトコフェノールはどれもビタミンEのことです。

このビタミンEは、熱や紫外線にとても弱くドッグフードに60℃以上のお湯を使ってふやかすとビタミン不足になる危険性があります。
また、インターネットで安価な通販購入の場合、保管方法や運送中の車中内で高温下に置かれることでも同様のことが起こります。

熱湯や高温にさらされることで蛋白・脂肪の変性、ビタミン類などの不活化などがおき、ビタミンE不足が起こることが考えられます。

がんの原因のひとつ

がんの原因の一つに過酸化反応の可能性が示唆されています。
つまり、体の”酸化”≒”さび” が引き金の一つではないかということです。

その観点から考えると、消費期限が短い、消化率・利用率・長期給仕・科学的健康診断データーなどの提示されない、できない、自然食・自然派フードや手作り食の場合は特に注意が必要です。
抗酸化処理や抗酸化対策が不十分な場合があり、身体にとって大切なビタミンEを十分に取れない可能性があるからです。



一般的に抗酸化剤として使われているのはα-トコフェノールです。
合成のビタミンEは安定化されているため(天然型と呼ばれるものも同様)、食品などの抗酸化剤としては使用されません。

※栄養強化のためや医薬品等は、合成のビタミンEが使用されます。
また、水溶性の食品類に直接添加することが困難であるため、ビタミンEを乳化させてしまうと酸化防止効果は期待できないとされています。
※食品用抗酸化剤として、粉末・乳化剤として販売しているメーカーもあります。
そのため、天然・自然派・自然食といわれる製品では、ビタミンE自体が不安定であり、酸化されやすく変質しやすいと思われます。

α-トコフェノールは不安定で酸化もしやすく抗酸化作用を有します。
しかし、食品等の酸化防止剤として使われる場合は、速やかに消費され効果の持続性が期待できません。
そのため、保存期間が長く酸化の条件が厳しいものは、熱安定性がよく持続性に優れるγ―トコフェノールやδ-トコフェノールのほうが良いのですが、ドックフード等にはあまり使われていません。

ビタミンE、α-トコフェノールは、体内の抗酸化剤としても有効性が認められており、食品の抗酸化剤としてだけではなく、身体の脂質の酸化を防ぎ、健康維持を助ける大切な栄養素です。
これが不足してしまうと、”がん”になりやすくなる可能性が示唆されます。

それらをワンちゃんに与え続けると、脂肪織炎や癌を誘発する原因になる可能性を否定できません。
つまり、脂肪織炎と膀胱がんは全く関連性がないとは言い切れないのです。

毎日食べるものだからこそ、信頼のおけるドックフードを選んで食べさせてあげてください。

信頼のおけるドッグフードとは

多くの動物病院で推奨され、療法食を製造販売しているものに、Hill’s、ロイヤルカナン、ビルバック、ピュリナ、スペシフィック、ドクターズケアなどがあります。
これらは、給仕試験やプラセボ試験により効果が確認され、科学的根拠と長期安全性と長期給仕テストのデーターで安全性も確認されています。
獣医師がすべてのフードを自ら試すことはできないため、このような科学的データーに基づき推奨しているのです。

最近では自然派ドッグフードと称し、多くのインターネット販売が乱立しています。
その中には、「獣医師の・・%推奨」とか、誇大広告ともとれるものも散見されています。
それらのメーカーに短・長期給仕テスト結果や生化学的検査データーの開示を求めても提供されることはありませんでした。

長く、毎日食べるものだからこそ、ドックフードは主観やイメージに踊らされることなく、客観性と”長期給仕”データーなどの科学的分析が正しく行われているものを選んでください。

早期発見するために

膀胱がんの早期発見は、通常の健康診断では難しいのが現状です。
今回、膀胱がんと診断されたのは、超音波検査かCT検査ではないでしょうか?

そのため血液検査、レントゲン、尿検査などの一般的な健康診断にいくつか検査項目をプラスすると良いでしょう。
膀胱がんでは、尿検査での潜血反応が必ずしも陽性にはならないため、尿沈渣検査でも見逃してしまう可能性は否定できません。
腹部超音波検査で膀胱の断層画像を定期的に診ることが大切です。

ワンちゃんの一年は、私たちの約4年になります。
膀胱がんに限らず、気になる症状があるときはかかりつけの動物病院へご相談ください。

アイン動物病院 院長 美濃部五三男 先生

麻布大学獣医学部卒業/麻布大学獣医学部附属家畜病院研究生

大阪府獣医師会学校飼育動物推進委員会・狂犬病予防対策推進委員会

1988‐1994 ダクタリ動物病院

久我山センター病院、大橋病院、堺病院(関西医療センター)勤務

1995 アイン動物病院 南千里病院 開院

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