獣医さんに相談してみましょう ④

獣医師監修

歯石を取る方法を教えてください

お口のケアで毎日ハミガキをしていますが、歯石が付いてしまいます。
解決方法を教えてください。

                       (マルチーズ 11歳)

ハミガキの仕方があってないことも

どのようなハミガキケアをされていますか。
行われているハミガキが効率的で効果があるかを、一度、かかりつけの動物病院で確認してください。

歯磨きブラシや歯磨きフロスなどでは、歯間・歯と歯茎の間(歯周ポケット)、歯の凹凸のところは磨き残しが出てしまいます。
歯ブラシやフロスはあくまで、歯の表面のケア方法でしかありません。

市販やネットのものなど、よく歯石が取れると宣伝しているものがあります。
これらのメーカーや発売先に問い合わせても、1、2例を提示するだけで「喜びの声をたくさんいただいています」といった回答のみで、「獣医師推奨」「獣医師が監修」「歯科医師監修」などと書かれているものでも、きちんとした根拠や調査結果や統計的検証などを提示してくれるところは今のところ皆無です。

歯石を取る方法

残念ながら歯石がついてしまった場合、物理的にとる以外は確実な方法は今のところありません。
歯肉炎が生じているのか、歯石の程度などで処置等の判断が変わります。
動物病院で診察していただくと安心です。

動物病院へ相談しましょう

麻酔が必要となります。
一部、無麻酔での歯石除去等を紹介しているところもありますが、お勧めできません。
なぜなら、歯周ポケットや歯の裏側まで、きちんと丁寧に歯石をとる必要があるからです。
物理的に歯石をとるため、歯の表面に小さな傷をつけることになり、歯石をとった後に歯の表面をポリッシングで磨く必要があります。

また、歯石をとるために超音波スケーラーというものを使います。

この装置は水が必要で、汚染された水が肺などに入らないために気管に管を入れる(気管挿管)必要があり、またより安全なガス麻酔で行われます。

診察を受けたのち、先生とご相談いただき、一度歯石をとり、リセットし口腔内管理・歯磨きを再開されることもご検討いただければと思います。

歯磨きを全くしなくても、歯石など口腔問題を起こさないワンちゃんや猫ちゃんもいます。

口腔内環境は生まれついてのものの可能性が高いと考えられ、同腹の兄弟・姉妹 生活環境が全く同じでも、歯石が付きやすい子、つきにくい子がいます。

しかし、幼児期の環境や食事内容にも左右されますし、動物の免疫状態でも口腔内環境は変わります。

お口の健康は体の健康にも繋がります

口腔内環境は、体にも大きな影響を与えます。
また、免疫の乱れや体の不調が口腔内に影響を与えます。

歯周病菌は血液に乗り全身に運ばれ、体全体の健康を損なうリスクがあります。
たとえば、心臓弁膜症や脳、肝臓・腎臓などへの口腔内細菌が運ばれ、潜在的な病気を引き起こしたりすることもあります。

人では、歯周菌の一部が脳脊髄関門を通り抜け脳にダメージを与え、脳卒中や痴呆症の原因の一つであることがわかっています。

人でも動物でも、歯周病菌が心弁膜症、肝炎、腎炎を起こしますが、これらは免疫が低下したときに起きやすくなります。
健康を維持して免疫力を整えるサプリメント(上薬研究所 サプレットプロなど)なども考慮してみてはいかがでしょうか。

前述の口腔内衛生管理方法も御参考になさってください。
かかりつけの動物病院で診察を受け、健康診断を受けることをご検討ください。

歯磨きについてですが、歯ブラシを使う場合、歯と歯茎の間(歯周ポケット)の歯垢をかき出すのが目的です。

多くの方が、歯に垂直に歯ブラシを当てて歯を磨いていることが多いようです。

(一概に間違いではないのですが、効果的でないことがあります)
口腔ケアのアイテムもたくさんありますので、飼い主さんやワンちゃんにあったものを選択、見つけてあげるとよいでしょう。

 

アイン動物病院  院長 美濃部五三男先生
麻布大学獣医学部卒業/麻布大学獣医学部附属家畜病院研究生
大阪府獣医師会学校飼育動物推進委員会・狂犬病予防対策推進委員会

1988‐1994 ダクタリ動物病院
久我山センター病院、大橋病院、堺病院(関西医療センター)勤務
1995 アイン動物病院 南千里病院 開院

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